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犯罪白書
最近の犯罪動向と犯罪者の処遇−令和7年版犯罪白書から−
久保 智美
はじめに犯罪白書は、刑事政策の策定とその実現に資するため、毎年、犯罪の動向と犯罪者処遇の実情を分析・報告している。令和7年版犯罪白書も、統計資料等に基づき、第1編から第6編(ルーティーン部分)において、令和6年を中心とする最近の犯罪の動向と犯罪者処遇の実情を概観・分析した。また、第7編の「犯罪被害の実態(犯罪被害の暗数と精神障害を有する者等の性犯罪被害)」では、近年の犯罪被害の動向、犯罪被害者等施策の取組の現状等を紹介するとともに、精神障害を有する者等の性犯罪被害に関する調査及び犯罪被害実態(暗数)調査の結果を踏まえ、我が国における犯罪被害の実態等に関して総合的に考察し、犯罪被害者等の支援の在り方等について留意すべき点の検討を行った
このうち、本稿においては、ルーティーン部分について、その要点を紹介する(法令名・用語・略称については、特に断りのない限り本白書で用いられたものを使用するほか、元号については、直前の元号と同様である場合は記載を省略する。)。
1 最近の犯罪動向
(1) 刑法犯
ア 認知件数
令和6年における刑法犯の認知件数は、73万7,679件(前年比3万4,328件(4.9%)増)であった。刑法犯の認知件数は、平成14年に戦後最多の約285万件に達した後、15年以降は減少に転じ、27年から令和3年までは戦後最少を更新していた。平成15年からの認知件数の減少は、刑法犯の7割近くを占める窃盗の認知件数が大幅に減少し続けたことに伴うものである。刑法犯の認知件数は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大していた令和2年及び3年において、大きく減少したが、4年以降は3年連続で増加しており、6年は、同感染症の感染拡大前である元年の98.5%の水準に達した(図1(白書1-1-1-1図)参照)。
罪名別の構成比では、窃盗(68.0%)が最も高く、次いで、詐欺(7.8%)、器物損壊(7.3%)、暴行(4.0%)の順であった。
イ 検挙率と検挙人員
令和6年における刑法犯の検挙率は、38.9%(前年比0.6pt 上昇)であった。刑法犯の検挙率は、平成13年に戦後最低(19.8%)を記録したが、14年から回復傾向にあり、令和3年には46.6%と平成元年以降で最高となった。令和4年から2年連続で低下したものの、6年は上昇した。
令和6年における刑法犯検挙人員は、19万1,826人(前年比8,557人(4.7%)増)であった。刑法犯検挙人員は、平成16年(約39万人)をピークに減少し続けていたが、令和5年から2年連続で増加した。罪名別の構成比では、窃盗(46.0%)が最も高く、次いで、暴行(12.8%)、傷害(10.6%)、横領(5.5%)の順であった。
図1 刑法犯 認知件数・検挙人員・検挙率の推移
ウ 主な刑法犯の動向
(ア) 窃盗
認知件数において刑法犯の7割近くを占める窃盗の認知件数は、戦後最多を記録した平成14年をピークに減少に転じ、26年から令和3年まで、毎年戦後最少を更新し続けていたが、4年から3年連続で増加し、6年は50万1,507件(前年比3.7%増)であった。検挙率は、平成26年から令和3年まで上昇し続け、4年から2年連続の低下を経て、6年は再び上昇し、33.1%(同0.6pt 上昇)であった。手口別に構成比を見ると、認知件数では自転車盗(34.7%)が最も高く、検挙件数では万引き(40.3%)が最も高い。また、特殊詐欺に関係する手口のうち、払出盗(不正に取得し、又は不正に作成したキャッシュカード等を利用してATM(CDを含む。)から現金を窃取するもの)及び職権盗(公務員等の身分を詐称し、捜査、検査等を装い、隙をみて金品を窃取するもの)の認知件数は、近年増加傾向にあったところ、6年は払出盗が8,030件(同2.8%減)、職権盗が1,176件(同25.5%減)と、いずれも減少した。
なお、近年、被害品が金属類(銅板、銅線等)に係る窃盗である金属盗の認知件数が増加傾向にあり、令和6年は2万701件(前年比27.2%増)であった。金属盗については、窃盗等が組織的かつ計画的に行われている実態が確認されている状況を踏まえ、7年6月に盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号)が成立し、盗難特定金属製物品の処分の防止のための特定金属くず買受業に係る措置、指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止等の規定が整備された。
(イ) 強盗
強盗の認知件数は、平成16年から減少傾向となり、令和3年には戦後最少を更新したものの、4年から3年連続で増加し、6年は1,370件(前年比0.7%増)であった。検挙率は、平成17年から上昇傾向にあり、令和4年から2年連続で低下したものの、6年は上昇し、92.5%(同2.0pt 上昇)であった。
(ウ) 詐欺
詐欺の認知件数は、平成30年から減少していたものの、令和3年から増加し、6年は5万7,324件(前年比24.6%増)であった。検挙率は、平成27年以降上昇傾向にあったが、令和3年から低下しており、6年は28.2%(同8.0pt 低下)であった。特殊詐欺(被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称。現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗(警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を装って被害者に電話をかけ、「キャッシュカードが不正に利用されている」等の名目により、キャッシュカード等を準備させた上で、隙を見るなどし、同キャッシュカード等を窃取するもの)を含む。)の認知件数は、6年は2万1,043件(同10.5%増)であった。
(エ) 不同意性交等・不同意わいせつ
不同意性交等(強制性交等(令和5年法律第66号による改正前の刑法177条及び178条2項に規定する罪をいう。)、監護者性交等及び強姦(平成29年法律第72号による改正前の刑法177条及び178条2項に規定する罪をいう。)を含む。)の令和6年における認知件数は3,936件(前年比45.2%増)であり、検挙件数は3,376件(同62.9%増)であり、検挙率は85.8%(同9.3pt 上昇)であった。
不同意わいせつ(強制わいせつ(令和5年法律第66号による改正前の刑法176条及び178条1項に規定する罪をいう。)及び監護者わいせつを含む。)の令和6年における認知件数は6,992件(前年比14.7%増)であり、検挙件数は5,857件(同21.7%増)であり、検挙率は83.8%(同4.8pt 上昇)であった。
(オ) その他の刑法犯
殺人の認知件数は、平成16年から28年までは減少傾向にあり、その後はおおむね横ばいで推移し、令和3年から2年連続で戦後最少を更新したが、5年から2年連続して増加し、6年は970件(前年比6.4%増)であった。検挙率は、安定して高い水準にあり、6年は96.6%(同1.0pt 上昇)であった。
暴行の認知件数は、平成18年以降おおむね高止まりの状況で推移した後、令和元年から3年まで減少し、4年から2年連続して増加したものの、6年は2万9,250件(前年比3.1%減)であった。検挙率は、平成16年からおおむね上昇傾向にあり、令和6年は83.1%(同0.7pt 上昇)であった。
脅迫の認知件数は、平成24年以降は3,000件台で推移していたが、令和4年は昭和43年以来54年ぶりに4,000件を上回り、令和6年は4,502件(前年比0.7%減)であった。検挙率は、平成26年以降8割を超えており、令和6年は82.5%(同0.4pt 低下)であった。
略取誘拐・人身売買の認知件数は、平成24年から増加傾向となり、令和5年に526件(前年比34.9%増)と大幅に増加し、6年は588件(同11.8%増)であった。検挙率は、おおむね8割から9割と安定して高い水準にあり、6年は94.6%(同4.6pt 上昇)であった。
器物損壊の認知件数は、平成16年から減少し続け、令和5年は前年と比べて増加したものの、6年は5万3,668件(前年比5.8%減)であった。検挙率は、平成16年から上昇傾向にあり、令和6年は15.1%(同0.4pt 上昇)であったが、依然として、刑法犯全体と比べて著しく低い。
(2) 特別法犯
令和6年における特別法犯の検察庁新規受理人員は、29万2,598人(前年比1.7%減)であった。このうち、道路交通法違反が21万818人であり、特別法犯全体の72.1%を占める。
道交違反(道路交通法及び保管場所法の各違反をいう。)を除く特別法犯の検察庁新規受理人員は、平成20年から緩やかな減少傾向にあり、令和6年は8万1,175人(前年比3.7%減)であった。罪名別に構成比を見ると、覚醒剤取締法違反(12.8%)が最も高く、次いで、大麻取締法違反(11.0%)、入管法違反(8.3%)、軽犯罪法違反(8.0%)、廃棄物処理法違反(7.4%)、銃刀法違反(6.1%)の順であった。なお、本稿において、大麻取締法は、大麻草栽培規制法(昭和23年法律第124号)の令和5年法律第84号による改正前の法律及び令和5年法律第84号による改正後の大麻草栽培規制法をいう。
2 犯罪者の処遇
(1) 検察
令和6年における検察庁新規受理人員の総数は、77万8,287人(前年比1.1%減)であった。罪種別の構成比を見ると、過失運転致死傷等及び道交違反がその約6割を占めている。6年における検察庁終局処理人員は78万2,735人(同1.1%減)であり、その内訳は、公判請求8万287人、略式命令請求15万8,783人、起訴猶予42万9,432人、その他の不起訴6万4,586人、家庭裁判所送致4万9,647人であった。公判請求率は、平成14年から26年までは7%台で推移していたが、同年以降上昇傾向にあり、令和6年は11.0%(同0.8pt 上昇)であった。
(2) 裁判
裁判確定人員は、平成12年(98万6,914人)から令和4年まで毎年減少していたところ、5年から増加しており、6年は20万3,801人(前年比0.9%増)であった。6年において、有期懲役判決が確定した人員(4万2,443人)について、全部執行猶予率(有期懲役人員に占める全部執行猶予人員の比率)は64.2%であった。また、無罪確定者は、96人(裁判確定人員総数の0.05%)であった。
令和6年の裁判員裁判対象事件の第一審における判決人員は、848人であり、そのうち、死刑が3人、無期懲役が22人、無罪が7人であった。また、有期懲役のうち、143人が全部執行猶予(うち72人が保護観察付)であった。
(3) 矯正
入所受刑者の人員は、平成19年から減少し続けたが、令和6年は1万4,822人(前年比5.2%増)と増加した。6年末現在の刑事施設における被収容者の収容人員は、4万544人(前年末比0.9%増)であり、収容率は全体で49.9%(同2.7pt 上昇)、既決では53.6%(同2.7pt上昇)であった。
令和6年の入所受刑者の罪名別構成比では、男女共に、窃盗が最も高く(男性34.9%・女性50.7%)、次いで、覚醒剤取締法違反(男性19.4%・女性26.3%)、詐欺(男性9.8%・女性8.0%)の順であった。入所受刑者の年齢層別構成比を見ると、女性は、男性と比べて高齢者(65歳以上の者) の構成比が高かった(男性12.9 %・女性21.6%)。
令和6年における出所受刑者(1万5,873人)について、満期釈放又は一部執行猶予の実刑部分終了により出所した者の比率は、37.2%(前年比0.2pt 上昇)であった。
令和7年6月1日、懲役及び禁錮を廃止し、拘禁刑を創設する刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が施行された。刑の種類の変更は、明治40年の刑法制定以来となる。改正後の刑法においては、拘禁刑の目的が受刑者の改善更生にあることが明記された。矯正施設においては、個々の受刑者の特性に応じて、作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇を実施することが可能となり、矯正処遇と社会復帰支援の充実を図っているところ、本白書において、その概要を紹介している。
(4) 更生保護
令和6年の保護観察開始人員は、仮釈放者(全部実刑者)が8,894人(前年比6.1%減)、仮釈放者(一部執行猶予者)が554人(同25.4%減)、保護観察付全部執行猶予者が1,496人(同11.1%減)、保護観察付一部執行猶予者が673人(同28.0%減)であった(いずれも事件単位の延べ人員)。
全部執行猶予者の保護観察率は、平成28年以降低下し、令和6年は4.9%(前年比1.2pt 低下)であった。
3 少年非行の動向と非行少年の処遇
少年による刑法犯検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)は、平成16年以降減少し続けていたが、令和4年から増加に転じ、5年には新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である元年の2万6,076人の水準を超え、6年は更に増加して2万9,675人(前年比13.2%増、元年比13.8%増)であった。少年人口比(10歳以上の少年10万人当たりの刑法犯検挙人員)も、令和4年から3年連続で上昇し、6年は278.8(同34.9上昇)であった。少年による刑法犯検挙人員の罪名別構成比では、窃盗が5割を超えて最も高く、次いで、傷害(9.7%)、横領(6.7%)の順であった。
道交違反に係るもの以外の少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員は、令和5年から2年連続で増加し、6年は4万3,074人(前年比7.0%増)であった。故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、犯行時16歳以上の少年に係るもの(以下「故意致死」という。)及び死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件(ただし、故意致死に該当する事件を除く。)であって、犯行時特定少年に係るものについては、家庭裁判所は、原則として検察官に送致しなければならないが、これらに該当する原則逆送事件の終局処理人員(年齢超過による検察官送致を除く。)の推移を原則逆送制度が開始された平成13年以降で見ると、原則逆送事件の対象が拡大した令和4年から増加に転じており、6年は195人(前年比21.9%増)であった。同年における原則逆送事件の家庭裁判所終局処理人員を処理区分別に見ると、特定少年は、検察官送致(刑事処分相当)73人、保護処分109人、その他13人であったのに対し、特定少年以外の少年は、いずれも0人であった。
少年鑑別所入所者の人員は、平成15年(2万3,063人)に昭和45年以降最多を記録した後、減少していたが、令和4年から3年連続で増加し、6年は6,012人(前年比10.3%増)であった。
少年院入院者の人員は、最近30年間では、平成12年(6,052人)をピークに減少傾向が続いており、令和元年からは、昭和24年以降最少を更新し続けていたが、令和5年から増加し、6年は1,828人(前年比12.0%増)であった。また、同年の女子比(男女総数のうち、女子の占める比率)は、8.6%(同0.4pt 上昇)であった。
保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付されている者)の保護観察開始人員は、平成11年以降減少し続けていたが、令和6年は前年に引き続き増加し、1万731人(前年比6.4%増)であった。少年院仮退院者の保護観察開始人員は、平成15年以降減少傾向にあったが、令和6年は前年と比べて増加し、1,630人(同22.8%増)であった。また、特定少年について見ると、同年は、保護観察処分少年5,883人(うち更生指導1,335人)、少年院仮退院者783人であった。
4 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇
(1) 交通犯罪
交通事故(道路交通法2条1項1号に規定する道路において、車両等及び列車の交通によって起こされた事故に係るものであり、昭和41年以降は、人身事故に限る。)の発生件数及び負傷者数は、平成17年以降減少傾向にあり、令和6年はそれぞれ29万895件(前年比5.5%減)、34万4,395人(同5.8%減)であった。死亡者数は、平成元年以降で見ると平成4年(1万1,452人)をピークに減少傾向にあり、令和6年は、2,663人(同15人減)であった。令和6年における危険運転致死傷の検挙人員は、844人(前年比8.5%増)であり、うち致死事件の検挙人員は42人(同27.3%増)であった。
令和6年における道交違反の取締件数は、425万8,504件(前年比6.0%減)であった。このうち、送致事件(非反則事件として送致される事件)の取締件数は、平成12年から減少傾向にあり、令和6年は21万3,640件(同1.7%減)であった。同年の送致事件の構成比を違反態様別に見ると、速度超過(25.0%)が最も高く、次いで、酒気帯び・酒酔い(10.0%)、無免許(8.4%)の順であった。酒気帯び・酒酔いの取締件数は、平成12年以降減少傾向にあるところ、令和6年は2万1,285件(同0.8%減)であり、平成期最多であった平成9年(34万3,593件)の約16分の1の水準であった。なお、令和6年における妨害運転(妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合の加重処罰規定を含む。)の取締件数は、146件(同44件増)であった。
(2) 薬物犯罪
覚醒剤取締法違反(覚醒剤に係る麻薬特例法違反を含む。)の検挙人員は、平成13年から減少傾向にあり、令和6年は6,306人(前年比3.8%増)であった。なお、同年における覚醒剤の押収量は、前年に引き続き1,000kg を超え、1,473.3kg(同8.0%減)であった。
大麻取締法違反(大麻に係る麻薬取締法違反及び麻薬特例法違反を含む。)の検挙人員は、平成6年(2,103人)と21年(3,087人)をピークとする波が見られた後、26年から増加傾向にあり、令和6年は6,342人(前年比5.4%減)であった(図2(白書4-2-1-4図)参照)。このうち、20歳代の検挙人員は、平成26年から増加し続けていたが、令和6年は3,350人(同5.5%減)であった。20歳未満の検挙人員も、平成26年以降増加傾向にあったが、令和6年は1,128人(同7.7%減)であった。同年の大麻取締法違反による検挙人員の年齢層別構成比をみると、30歳未満が全体の約7割を占めている。
図2 大麻取締法違反等 検挙人員の推移(罪名別)
(3) 暴力団犯罪
暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者)の刑法犯検挙人員は、減少傾向にあり、令和6年は5,204人、刑法犯検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は2.7%であった。罪名別では、詐欺(1,103人)が最も多く、次いで、傷害(1,071人)、窃盗(713人)の順であり、全検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は、恐喝(28.0 %)が最も高く、次いで、賭博(17.1 %)、逮捕監禁(15.3%)の順であった。
暴力団構成員等の特別法犯検挙人員も、減少傾向にあり、令和6年は3,045人、特別法犯検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は5.9%であった。罪名別では、覚醒剤取締法違反(1,707人)、大麻取締法違反(464人)の順で多く、全検挙人員に占める暴力団構成員等の比率を見ると、暴力団排除条例違反(92.8%)、暴力団対策法違反(90.9%)の順で高かった。
(4) 財政経済犯罪
税法違反のうち、消費税法違反の検察庁新規受理人員は、金の密輸入事件の増加の影響もあり、平成28年から30年にかけて急増したが、同年4月に無許可輸出入罪等に対する罰則及び不正の行為により保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税を免れた者等に対する罰則が強化され、令和元年から減少に転じた。その後、4年には再び増加し、6年は85人(前年比23.2%増)であった。
令和6年の金融商品取引法違反の検察庁新規受理人員は145人であった。6年度における証券取引等監視委員会による同法違反の告発は、7件・8人であり、その内訳は全て「インサイダー取引」であった。
(5) サイバー犯罪
不正アクセス行為(不正アクセス禁止法11条に規定する罪)の認知件数は、同法が施行された平成12年以降、増減を繰り返しながら推移し、令和5年は前年の約3倍と大きく増加したが、6年は減少し、5,358件(前年比15.1%減)であった。また、不正アクセス後に行われた行為別に内訳を見ると、「インターネットバンキングでの不正送金等」(4,342件)が最も多く、次いで、「メールの盗み見等の情報の不正入手」(193件)、「インターネットショッピングでの不正購入」(180件)、「知人になりすましての情報発信」(69件)の順であった。
サイバー犯罪のうち、インターネットを利用した詐欺、脅迫及び児童買春・児童ポルノ禁止法違反等、犯罪の実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪の検挙件数は、平成29年から増加傾向にあり、令和6年は1万1,446件(前年比4.5%増)であった。罪名別に見ると、前年と比べ、犯罪収益移転防止法違反は109.8%、ストーカー規制法違反は12.0%増加した。一方、青少年保護育成条例違反は43.7%、わいせつ物頒布等は42.7%、児童買春・児童ポルノ禁止法違反は17.9%減少した。
(6) 児童虐待・配偶者からの暴力・ストーカー等に係る犯罪
児童虐待に係る事件(刑法犯等として検挙された事件のうち、児童虐待防止法2条に規定する児童虐待が認められたもの)の検挙件数及び検挙人員は、平成26年以降大きく増加し、令和6年は2,649件(前年比11.1%増)、2,682人(同10.9%増)であり、それぞれ直近から20年前の平成17年(275件、295人)と比べると約9.6倍、約9.1倍であった(図3(白書4-6-1-1図)参照)。
図3 児童虐待に係る事件 検挙件数・検挙人員の推移(罪名別)
配偶者からの暴力事案等の検挙件数について見ると、配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は、平成27年以降減少傾向にあったが、令和6年は前年に引き続き増加し、69件(前年比20件増)であった。一方、刑法等の他法令による検挙件数の総数は、平成23年以降増加しており、近年は高止まりの状態にある。令和6年は8,421件(同215件減)であり、平成22年の約3.6倍であった。罪名別では、特に、暴行及び傷害の検挙件数が大きく増加している。
ストーカー規制法による警告の件数は、平成29年から減少傾向にあり、令和6年は1,479件(前年比3.6%減)であった。同法による禁止命令等の件数は、平成29年から急増し、令和6年は2,415件(同23.0%増)、うち緊急禁止命令等は1,466件であり、同法施行後最多であった。ストーカー規制法違反の検挙件数は、平成24年から増加傾向にあり、令和6年は1,341件(同24.1%増)で、著しく増加した平成24年の前年である23年の約6.5倍であった。また、刑法等の他法令による検挙件数は1,743件(同2.0%増)で、同様に平成23年と比べると約2.2倍であった。なお、令和6年におけるストーカー事案に関する相談等件数(ストーカー規制法その他の刑罰法令に抵触しないものも含む。)は、1万9,567件(同1.4%減)であった。
(7) 男女別に見た犯罪
刑法犯及び特別法犯の検挙人員総数は、男性では平成18年(37万4,125人)、女性では17年(9万5,760人)をピークにその後はいずれも減少傾向にあるところ、令和6年は、男性では19万5,412人、女性では4万8,246人と、いずれもピーク時の約2分の1であった。女性は、一貫して男性より検挙人員総数が少なく、6年の男女を合わせた検挙人員総数に占める女性の比率は19.8%であった。また、検挙人員の人口比(14歳以上の男女別10万人当たりの検挙人員)も、女性は、男性より一貫して低い。罪名別構成比を男女別に見ると、男女共に、窃盗の構成比が最も高いが、女性は約7割を占め、男性と比べて顕著に高く、特に、万引きによる者の構成比が高い。
令和6年における入所受刑者の総数は、男性では、平成18年をピークに翌年から減少し続けていたが、令和6年は1万3,265人(前年比5.3%増)であった。他方、女性では、平成18年をピークに翌年からおおむね横ばいで推移した後、28年からは減少傾向にあったが、令和6年は1,557人(同4.8%増)であった。入所受刑者の総数に占める窃盗及び覚醒剤取締法違反の人員の合計の割合は、男性では、平成元年以降一貫して6割未満にとどまっているのに対し、女性では、同年以降一貫して6割を超えており、23年以降は8割前後となっている。
(8) 年齢層別に見た犯罪
年齢層別の刑法犯検挙人員を見ると、高齢者層は、平成20年(4万8,786人)をピークとして高止まりの状況が続いた後、28年以降減少傾向にあり、令和6年は4万1,070人(前年比0.1%減)であった。高齢者率(刑法犯検挙人員に占める高齢者の比率)については、他の年齢層の検挙人員の減少傾向が高齢者層と比べて大きいことから平成28年以降も上昇傾向にあったが、令和4年から他の年齢層の検挙人員が増加したことから3年連続で低下しており、6年は前年と比べて1.0pt 低下し、21.4%であった。
令和6年における入所受刑者の罪名別構成比を年齢層別に見ると、20〜29歳は、他の年齢層と比べて詐欺の構成比が高く、約2割を占めており、40〜49歳及び50〜59歳は、覚醒剤取締法違反の構成比が高く、約3割を占めている。高齢者は、他の年齢層と比べて窃盗の構成比が高く、65歳以上の女性は、65歳以上の男性と比べて窃盗の構成比が顕著に高い。
(9) 外国人による犯罪
令和6年における外国人新規入国者数は、過去最多の3,401万5,766人に達し、同年末における在留外国人の人員は、376万8,977人となり、過去最多を更新した。
来日外国人による刑法犯の検挙件数は、平成17年(3万3,037件)をピークに減少傾向にあったが、令和5年から2年連続で増加し、6年は1万3,405件(前年比33.5%増)であった。その罪名別構成比を見ると、窃盗(67.9%)が最も多く、次いで、傷害・暴行(9.2%)、詐欺(4.2%)の順であった。
来日外国人による特別法犯の検挙件数は、平成16年をピークに24年まで減少した後、25年からの増減を経て、令和5年から2年連続で増加し、6年は8,389件(前年比4.2%増)であった。このうち、主な罪名・罪種を見ると、入管法違反(5,974件)、薬物関係法令違反(覚醒剤取締法、大麻取締法、麻薬取締法、あへん法及び麻薬特例法の各違反。1,296件)、風営適正化法違反(64件)であった。令和6年における来日外国人被疑事件(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)の検察庁新規受理人員(1万8,722人)の地域・国籍別構成比を見ると、ベトナム(35.5%)が最も多く、次いで、中国(17.6%)、タイ(5.3%)の順であった。
(10) 精神障害のある者による犯罪等
令和5年における精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者)の刑法犯検挙人員は、1,286人(精神障害者1,021人、精神障害の疑いのある者265人)であり、罪名別では、傷害・暴行(422人)が最も多く、次いで、窃盗(232人)であった。また、同年における刑法犯検挙人員の総数に占める精神障害者等の比率は、0.7%であり、罪名別では、放火(11.3%)、殺人(5.9%)の順に高かった。
5 再犯・再非行
刑法犯により検挙された者のうち、再犯者(前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり、再び検挙された者)の人員は、平成18年(14万9,164人)をピークとして、その後は漸減状態にあったが、令和5年から2年連続で増加し、6年は8万8,697人(前年比3.0%増)であった。他方、初犯者の人員は、平成16年をピークとして、その後は減少し続けていたが、令和5年から2年連続で増加し、6年は10万3,129人(同6.1%増)であった。再犯者の人員が減少に転じた後も、それを上回るペースで初犯者の人員が減少し続けたこともあり、再犯者率(刑法犯の検挙人員に占める再犯者の人員の比率)は、平成9年以降上昇傾向にあったが、令和3年から4年連続で低下し、6年は46.2%(同0.7pt 低下)であった(図4(白書5-1-1図)参照)。
図4 刑法犯 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移
刑法犯により検挙された20歳以上の者のうち、有前科者(道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者)の人員は、平成18年をピークに令和4年まで減少し続けた後、5年から2年連続で増加し、6年は4万5,491人(前年比2.7%増)であった。20歳以上の刑法犯検挙人員総数が同様に増減していることもあり、有前科者率(20歳以上の刑法犯検挙人員に占める有前科者の人員の比率)は、平成8年以降26〜29%台で推移しており、令和6年は26.7%であった。罪名別では、刑法犯全体(26.7 %) と比べ、恐喝(51.2 %)、強盗(38.5 %)、詐欺(34.7%)の有前科者率が特に高い。
令和6年に起訴された者(過失運転致死傷等及び道交違反により起訴された者及び法人を除く。)の犯行時の身上を見ると、全部執行猶予中の者が5,942人(うち734人が保護観察中)、一部執行猶予中の者が339人(うち333人が保護観察中)、仮釈放中の者が538人、保釈中の者が175人であった。
令和6年の入所受刑者人員の総数1万4,822人のうち、再入者の人員は7,957人(前年比2.7%増)であり、再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)は53.7%(同1.3pt 低下)であった。うち女性の再入者の人員は730人(同2.2%増)であり、再入者率は男性と比べると低い46.9%(同1.2pt 低下)であった。
出所受刑者の再入所状況については、令和2年の出所受刑者の5年以内再入率(ある年の出所受刑者人員のうち、出所後の犯罪により、出所年を1年目として5年目(令和2年の出所受刑者であれば令和6年)の年末までに再入所した者の人員の比率)の総数を見ると34.0%であり、平成27年の出所受刑者の10年以内再入率の総数を見ると43.9%であった(図5(白書5-3-6図)参照)。
令和2年の出所受刑者の5年以内再入率を罪名別に見ると、窃盗(41.6%)が他の罪名と比べて高く、次いで、覚醒剤取締法違反(39.0%)、傷害・暴行(31.2%)の順であった。また、平成13年から令和2年までの間の各年における出所受刑者の5年以内再入率を出所事由別に見ると、いずれの年も満期釈放者(平成28年以降の出所受刑者については一部執行猶予の実刑部分の刑期終了により刑事施設を出所した者を含む。)は仮釈放者よりも再入率が高かった。
図5 出所受刑者の出所事由別再入率
再非行少年率(少年の刑法犯検挙人員に占める再非行少年(前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補導)されたことがあり、再び検挙された少年)の人員の比率)は、平成10年から28年まで上昇し続けたが、29年以降は低下傾向にあり、令和6年は31.2%(前年比1.0pt上昇)であった。令和2年の少年院出院者について、5年以内再入院率は11.9%、再入院・刑事施設入所率は19.8%であり、令和5年の少年院出院者について、2年以内再入院率は10.8%、再入院・刑事施設入所率は11.5%であった。
6 統計上の犯罪被害
人(法人その他の団体を除く。)が被害者となった刑法犯の認知件数及び男女別の被害発生率(人口10万人当たりの認知件数)は、平成14年のピーク後に減少・低下し続けていたが、令和4年から3年連続して増加・上昇し、6年は、認知件数が56万4,401件、被害発生率が男性604.2、女性315.3であり、認知件数については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である元年の97.0%の水準にまで達した。
令和6年において、生命・身体に被害をもたらした刑法犯の死傷者の総数は、2万6,563人(前年比1.6%増)であり、うち死亡者は681人、重傷者(全治1か月以上の負傷者)は2,883人であった。
令和6年において、財産犯(強盗、窃盗、詐欺、恐喝、横領及び遺失物等横領。被害者が法人その他の団体である場合を含む。)による被害総額は、約4,021億円(うち現金被害額約2,592億円)であり、財産犯による被害総額を罪名別に見ると、詐欺によるもの(被害総額の76.5%)、窃盗によるもの(同19.6%)の順に多かった。このうち、現金被害額は、詐欺によるものが最も多く、財産犯による現金被害総額の8割以上を占めた。なお、同年の特殊詐欺事件全体の被害総額は、前年の約1.6倍の約719億円であった。
(法務省法務総合研究所研究部主任研究官)